【発表報告】 視線入力による次世代リハビリの可能性(世界理学療法学会)
2025年5月30日、東京で開催された世界理学療法学会(World Physiotherapy Congress 2025)にて、福島県立医科大学の楠本泰士准教授(理学療法士)が、デジリハの視線入力型ゲーミフィケーションアプリを活用した研究成果を発表しました。
研究背景と目的
本研究は、神経発達症の診断はないものの、学習や学校生活に困難を感じている通級指導教室に在籍する児童(8~10歳)4名を対象に、Tobii Eye Trackerを用いた眼球運動アプリ(デジリハ社製)による約6か月間の継続的な介入を実施。視機能・注意機能・社会性への影響を検討しました。
研究方法
2023年10月から2024年3月までの約6か月間、児童は学校内で週1~2回、1回10~15分間、Tobii Eye Trackerを用いた眼球運動促進アプリ(デジリハ社製)に取り組みました。
介入前後には以下の評価を実施:
- 眼球運動検査
- SDQ(Strengths and Difficulties Questionnaire):子どもの強さと困難さ
- VSPCL(Vision-related Symptom and Performance Checklist):視機能に関連した生活上の困難さ
- TMT-A(Trail Making Test A):注意機能評価
主な結果
①固視の左右差や空間認識、読み書きに関わる視覚活動において複数の児童に改善が見られた。
②注意機能評価(TMT-A)では2名が探索時間の短縮を達成した。
③情緒や仲間関係においても1名改善の兆しが確認された。
まとめ
学校生活内での短時間・定期的な視線入力ゲームの導入により、視機能、注意機能、社会性の改善が一部の児童で確認されました。本研究は、診断の有無にかかわらず、困難を抱える子どもたちへの新たな支援手段としての可能性を示しています。
海外・国内参加者の反応
楠本氏は「データの可視化や分析を可能にするデジリハの“ダッシュボード機能”への期待の高さを実感しました。」と話します。一方で、日本国内の参加者からは、『視機能評価の重要性』に関する共感や気づきの声が多く寄せられ、学校生活で見過ごされがちな視機能の問題に改めて注目が集まりました。
最後に楠本氏は「今回の発表がその課題に光を当てる機会となったことを嬉しく思います。」と振り返りました。